朝日を浴びた帰源院は別世界のよう
12月5日、2年振りの「第119回 鎌倉漱石の會 漱石忌例会」が行われました。
12月9日は漱石先生の命日ということで、12月の例会では和尚様の読経もあります。
午前中の講師は天理大学文学部教授の北川扶生子先生。メインテーマは『虞美人草』でした。漱石は小宮豊隆宛の手紙に、嫌な女の象徴が主人公の「藤尾」、可憐な女が「小夜子」、はっきりそう書いています。でも、藤尾のような悪女ってめったにいませんよね。朗読のしがいがありました!『虞美人草』の朗読(抜粋)、ぜひ聴いてみてください。
『虞美人草』は失敗作と言われたようです。前半の美文は確かに読みにくいのですが、後半だけ読んでも十分に面白い作品です。文体をめぐる感覚が「言文一致」へと変化した時代ですもの。漱石先生はやはり凄い方だと思います。
『草枕』は絵画のような作品。確かに、そうですね~。どこを切り取って読んでも面白い。それぞれの場面で違った雰囲気があるので、同じ作品だとは思えないです。漱石先生は情景描写の天才だと思わずにいられません。
それから、「漢学」が男同士の関係が軸であるのに対して、「英文学」は男女関係が軸なのだそうです。漱石はどちらの影響も受けているような気がしますが、現実の恋愛・夫婦・家庭を描いた作品が多いという点では「英文学」の影響が強く、それゆえ今の世にも通用するのでしょうね~
午後の講師は清泉女子大学文学部教授の今野真二先生。今野先生は日本語の研究者です。漱石の作品は新聞連載が多いため「各回がある程度の独立性を持ち、冒頭と終わりは重要な意味を持つ」。確かにそうですね~。
朝ドラも毎回「始まりと終わり」があり次回も観たいと思わせてくれます(2時間ドラマとは違う!)。今ちょうど『明暗』を生徒様と1章ずつ読んでいるのですが、それを強く感じます。ちなみに『坊ちゃん』は新聞連載小説ではないそうです。
それから、自筆原稿には書きなおした箇所がたくさんあるのを見せていただきました。書き直さなければ・・・と思うと、確かに他のバージョンも考えられますね。
漱石のルビについて。。。これは朗読する者にとっては最も関心のある話。『それから』の「門野」の台詞には「アソブ」、「代助」には「アスブ」と(東京言葉)と漱石はルビをふったそうですが、朝日新聞掲載の時は共通語「アソブ」に統一されたそうです。細かいところまで考えてルビをふっているんですね~。『明暗』も「芝居」と書いて「シバヤ」とルビが振ってあるところがあります。ここだけは「シバヤ」と読んでほしいという漱石の願望(登場人物が東京出身で東京言葉を使っている)の表れです。
本当に興味深いお話でした。今野先生は6月11日の「新感覚で語る『門』」に出演されます。私たちも朗読をしますので、ご興味のある方は是非お越しください~☆
「帰源院」の印!
帰源院で収穫された銀杏。
夏目漱石「門」の印!